市長の施政方針表明(令和7年3月定例会)

はじめに
本日、ここに、令和7年第2回蕨市議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位には、公私とも大変お忙しい中、ご参集を賜り、厚くお礼を申し上げます。今定例会は、令和7年度の当初予算をはじめとする重要な案件をご審議いただくことになりますが、この際、私が、これからの市政運営に臨む基本的な考え方や新年度予算の編成方針、更には予算の概要と主な事業について申し上げ、議員各位並びに市民の皆さんのご理解とご協力をお願いする次第であります。
激動の時代の中で~地方自治体の大きな役割
さて、2025年、令和7年は、戦後80年の大きな節目にあたりますが、世界では、ロシアによるウクライナ侵攻やガザ地区での紛争など、争いや人々の分断が広がり、地球温暖化による異常気象や災害の激甚化、生成AIなどデジタルテクノロジーの急速な進化による光と影、アメリカでの第2次トランプ政権の発足など、予測できない激動の時代を迎えています。日本においても、人口減少・少子高齢社会が本格化し、昨年の出生数は、1899年の統計開始以降、はじめて70万人を下回る見込みとなりました。更には、豪雨災害や南海トラフ地震など大規模災害の懸念の高まり、社会インフラの深刻な老朽化の進行、依然として続く厳しい物価高騰による市民生活への影響など、課題は山積しており、多くの人々が先行きへの不安や閉塞感を抱えているのではないでしょうか。
こうした厳しい激動の時代にあって、私は、市民に最も身近な地方自治体における住民と一体となったまちづくりこそ、その打開のカギを握っていると考えています。
日本が直面する課題を乗り越え、発展を続けてきた蕨
「問題を正しく認識すれば、その答えは半ば分かったと同じである」
これは、特殊相対性理論の発見で有名なアルベルト・アインシュタインの言葉ですが、問題への正しい認識が、解決への道そのものであることを示しています。そして、これからの国づくり、まちづくりを進めていく上でも、今後、直面する課題をしっかりと認識することこそが、その打開にとって、何よりも大切であることを私たちに教えてくれています。
蕨市では、この間、大規模災害への備え、老朽化した社会インフラや人口減少社会への対応、心の通い合うまちづくりなど、まさに、日本が直面する、こうした課題を正面に位置付け、それを乗り越えるまちづくりを進めてきました。
防災対策では、昨年、能登半島地震を通じて、水道の耐震化の遅れが全国的な課題となりましたが、蕨市では、水道の耐震化を計画的に推進し、昨年度末で、基幹管路の耐震化率は、全国平均が42.3%にとどまる中99.4%に達しており、重要施設配水管の耐震化率も全国平均の38.7%に対し、92.8%となりました。老朽化した社会インフラの問題では、先月28日、八潮市で、県の下水道管の破損が原因とみられる大規模な道路陥没事故が発生し、いまだ、転落したトラックの運転手の方の安否が不明と言う心配な状況が続くとともに、2週間余にわたり、周辺の約120万人に下水道の使用自粛が呼びかけられるなど市民生活に大きな影響を及ぼす事態となりました。蕨市では、この事故を受けて、速やかに、直径2m以上の下水道管約3.4キロメートルの緊急点検を実施し、「直ちに対応が必要となる異状がない」ことを確認しましたが、老朽化した下水道管への対応では、平成28年度に下水道長寿命化基本計画を策定し、毎年、ブロックごとに、下水道管の点検、調査を実施し、老朽化した下水道管の改修を計画的に進めてきました。
人口減少社会への対応でも、昨年4月から、18歳、高校卒業までの医療費無料化や、県南で初めてとなる学校給食費の2人目以降の無償化を実施するとともに、学校体育館のエアコン設置では、全国の設置率が19%にとどまる中、昨年、全校で完了するなど、子育て支援や教育の充実に力を入れ、市民意識調査では、子育て世帯の約85%が蕨について「子育てしやすい」と回答しています。
更には、蕨の未来への飛躍に向けたまちづくりでも、一昨年秋の新庁舎の完成に続き、昨年1月からは蕨駅西口再開発事業の工事が本格的にスタートし、市立病院の移転建替えに向けた取り組みも進んでいます。そして、市長タウンミーティングやSDGs協働事業提案制度など、市民の皆さんと心が通い合うまちづくりを推進し、まちへの愛着は、毎年、70%前後と高い水準になっています。
こうした市政が進む中、蕨市の人口は、私の市長就任時の約7万人から、昨年5月には7万6000人を越えるなど、「選ばれる」まちづくりが進んでいます。
同時に、持続可能な蕨に向けた財政の健全化についても、令和5年度末には、市長就任時と比較して、市の借金は約74億円削減され、市の基金は約68億円増額し、合わせて約142億円の財政改善が図られるなど、引き続き、着実に進んでいます。
「安心・にぎわい・未来 ~ 蕨の成長・進化の加速化へ」
令和7年度は、こうした成果の上に立って、昨年4月からスタートした「将来ビジョンⅡ」に基づくまちづくりを本格化させ、「あったか市政」第2ステージの取り組みのギアを一段と上げていく、そんな年にしていきたいと考えています。
そして、安全安心や環境問題、子育て・教育、健康づくり、にぎわい創出など、各施策の進化を加速化し、自治体DXの推進や蕨駅西口再開発、市立病院の建替えなど、蕨の成長・未来への投資を思い切って行うなど、激動の時代の中にあっても、安心して住み続けられるまち、選ばれるまち、未来に飛躍するまち蕨に向けた取り組みを本格的に推進していく決意であります。
そこで、令和7年度は、「安心・にぎわい・未来~蕨の成長・進化の加速化へ」をテーマとして予算編成を行い、一般会計の当初予算案は321億8,000万円となり、初めて300億円を超え、過去最大規模となりました。
令和7年度の重点課題~将来ビジョンⅡ重点プロジェクトと未来への重点戦略
将来ビジョンⅡ・重点プロジェクト
それでは、最初に、令和7年度の重点課題について申し上げます。令和7年度は、「将来ビジョンⅡ」に掲げる4つの「重点プロジェクト」の更なる推進と未来への飛躍に向けた3つの「重点戦略」に取り組んでいく考えであります。
(1)安全安心・エコシティ プロジェクト
重点プロジェクトの1つ目は、「安全安心・エコシティ プロジェクト」です。
その第1は、「防災都市づくりの更なる推進」です。まず、市民生活に欠かせない重要なライフラインである上下水道の更なる耐震化と老朽化対策を進めます。上水道では、引き続き、避難所や病院などへの重要施設配水管の耐震化を進め、令和7年度末には、耐震化率は96.4%となる見込みです。また、下水道については、引き続き、下水道長寿命化基本計画に基づき、老朽化した下水道管の改修を行うとともに、市役所や市立病院など重要施設への下水道の管路耐震化基本計画を策定し、更なる耐震化を進めます。加えて、JRをまたぐ橋りょうの長寿命化・耐震化を推進し、塚越陸橋と蕨跨線人道橋に加え、新たに丁張跨線人道橋の修繕工事を行います。
また、災害発生時に被害状況の把握に有効な災害用ドローンを消防本部に導入するほか、水害対策の強化のため、市内の道路冠水状況を直ちに察知できる浸水センサを設置するとともに、救助用ボート4艇を購入し、全ての消防団への配備を完了します。
第2に、「防犯対策の更なる強化」です。昨年度は、街なか防犯カメラの増設や家庭用防犯カメラ設置費への補助制度の創設などをすすめ、昨年の市内の犯罪件数は前年から約11%減少し、県内の犯罪発生率もワースト9位にまで改善することができました。新年度には、防犯対策の更なる強化を図るため、帰宅時間帯を中心に蕨駅東西口周辺で青色防犯パトロールを実施するとともに、飲料メーカーと連携して防犯カメラ付き自動販売機の公園や公共施設への設置、闇バイトの防止に向けた啓発強化も、推進します。
第3に、「脱炭素社会の実現に向けた取り組み」です。第3次蕨市環境基本計画に基づき、新年度は、重点プロジェクトで掲げた「ソーラー蓄電池ステーション」の開設に向け、公共施設への太陽光発電設備の導入調査を行うとともに、公用自動車に初めてEV、電気自動車を導入いたします。
(2)子どもの元気・未来創造シティ プロジェクト
重点プロジェクトの2つ目は、「子どもの元気・未来創造シティ プロジェクト」です。
その第1は、「全ての子ども達に確かな学力と生きる力を育む教育の推進」です。
まず、ICT教育の更なる充実を図ります。蕨市では、令和2年度に全ての児童生徒に1人1台の端末整備を行うとともに、全ての学校のWi-Fi環境を整備し、昨年2月に日経BP社が発表した公立学校情報化ランキングで、小学校・中学校ともに県内1位になるなど、早くからICT環境の整備を進めてきました。また、こうしたICT機器を活用し、デジタルドリルの導入や、中学校2、3年生を対象に英語4技能テスト・GTECを実施し、今年度は、中学3年生の「英検3級相当以上」の比率が64.3%となり、国の目標である50%を大きく上回りました。新年度は、児童生徒1人1台の端末の一斉更新を行うとともに、高い専門的スキルを持ったICT支援員の増員や東中学校へのDXルームの整備など、ICT教育の更なる充実を図ります。
次に、不登校対策の抜本的な拡充です。市独自に、スクールカウンセラーを1名増員するとともに、市内の3中学校全てに、不登校の生徒の居場所や学習の場となる校内教育支援センター、通称「e-station」を整備し、専任の教員とサポートスタッフを配置します。また、これらのスタッフは、担任とも連携して、学校に来ることができない生徒と保護者へのアウトリーチによる支援も行っていきます。
更に、保護者や子ども達の強い要望である学校トイレの改善について、洋式化を含む全面リニューアルを、令和9年度までの3年間で全ての小中学校で行うこととし、新年度は、東小学校、南小学校、中央小学校で改修工事を実施するとともに、次年度の改修に向けて、西小学校、北小学校、中央東小学校、塚越小学校の設計委託を行います。
第2は、「保育園や学童保育の更なる充実」です。
まず、保育体制の充実に向けて、保育園での保育士確保を支援するため、保育士をサポートする「保育支援者」や「スポット支援員」の配置への補助制度を創設するとともに、新卒保育士に20万円の就職準備金を貸付け、2年間の就労をもって返済を免除する制度の利用を促進するため、事業主負担をなくすための補助を新たに開始します。次に、学童保育室については、ニーズの増大に対応して、4月から東小学校区に1か所増設し、市内22か所とするとともに、今年度の申し込み状況を踏まえて、待機児童が多く発生する見込みである南小学校区について、更なる増設の検討を進めます。
第3は、「子ども達がいきいき育つ環境づくり」です。まず、家事や介護などで過度な負担を抱えるヤングケアラーへの支援の拡充に向けて、関係機関が連携して相談支援を行う「ヤングケアラー・コーディネーター」をこども家庭センター内に配置します。また、子ども達の居場所づくりや遊びの充実をはかるため、錦町1号公園を、子ども達が自然と触れ合える公園をコンセプトとして整備するとともに、ボール遊びのできる広場を市民公園内に整備するため、それぞれ実施設計を行います。
(3)魅力と活力・にぎわいシティ プロジェクト
重点プロジェクトの3つ目は、「魅力と活力・にぎわいシティ プロジェクト」です。
まず第1は、物価高騰対策の実施です。依然として続く厳しい物価高騰の中、まずは、国の対策である非課税世帯への物価高騰重点支援給付金や市独自のひとり親世帯への給付金を3月上旬から速やかに支給を開始するとともに、新年度は、「蕨市プレミアム付きデジタル商品券」事業を実施します。これは、市民の暮らしを応援するとともに、市内消費の活性化による事業者支援を図るため、スマホ決済、PayPayで使える、30%のプレミアム付きデジタル商品券を市民に販売するもので、県内初の取り組みとなります。具体的には、1口、13,000円分のデジタル商品券を10,000円で販売し、販売口数は35,000口、申込期間は6月一カ月間で、利用期間は7月1日から12月末までを予定しています。
第2に、「中心市街地活性化の更なる推進」です。蕨市役所の仮設庁舎跡地について、民間活力を活用して、中山道への新たな「にぎわい交流拠点」の整備に向けて計画を策定し、事業者の公募などを進めるとともに、中央第一地区まちづくりにおいて、蕨駅西口駅前通りを「にぎわい交流軸」として拡幅整備するため、ワークショップを開催し、基本設計を行うなど、駅前再開発と連動した回遊性のあるまちづくりを推進します。
第3に、「市民が集う生涯学習・芸術文化の拠点の整備」です。市立病院の建替え方針の決定に伴い、移転整備を行うこととなった西公民館・松原会館等について、この間、錦町地区の市民の皆さんや利用者の皆さんの声を聞きながら、新たな複合施設の基本計画、基本設計の策定作業を進めてきましたが、新年度は、その実施設計を行い、建設工事に着手していく予定です。また、蕨市の芸術文化の拠点である市民会館の長寿命化に向けて、コンクレレホール内の舞台照明設備や舞台床、客席等の改修を行います。
(4)みんなで笑顔・健幸シティ プロジェクト
重点プロジェクトの4つ目は、「みんなで笑顔・健幸シティ プロジェクト」です。
まず第1に、「スマートウエルネスシティの推進」です。誰もが健康と幸せを実感できるスマートウエルネスシティのまちづくりを本格化させるため、3月末までに策定するアクションプランに基づき、新年度は、新たに市内に7つのウォーキングコースを設定し、その標示や歩道の改修を行うほか、今年度、大変多くの皆さんに参加いただいたウォーキングイベントや蕨あるこうキャンペーンの開催、公園への健康遊具の設置などに取り組みます。
第2に、「がん検診の拡充と患者支援の推進」です。乳がん検診を集団検診から個別検診に移行し、より受診しやすく改善を図るほか、新たに前立腺がんの個別検診を開始し、胃がん検診の内視鏡検査の定員も拡充します。また、新たに、AYA世代の終末期がん患者が在宅療養に必要とする生活支援費用の一部を補助する制度や、がん患者が利用できるウィッグ、補整具などの購入費を支援するアピアランスケア用品購入費補助金制度を創設します。
第3に、「介護人材確保の推進」です。介護人材の不足が全国的な課題となる中、介護人材を発掘、確保するため、介護に関する入門的研修の実施から市内事業所とのマッチングまでを一体的に行う事業を実施するほか、市内在宅サービス介護事業所への就職や介護福祉士などの資格取得に対して、最大10万円を補助する制度を新たに創設します。
未来への飛躍に向けた重点戦略
次に、未来への飛躍に向けた3つの重点戦略について申し上げます。
(1)自治体DXの推進
第1は、「自治体DXの推進」についてです。現在、新年度から5年間を計画期間とする「蕨市DX推進計画」の策定作業を進めていますが、新年度には、この計画に基づき、デジタル技術を活用した市民の利便性向上や業務の効率化を図るため、自治体DXの更なる推進を図ります。
まず、妊娠から子育てまでの健診や予防接種の記録をデジタルで一元管理でき、妊娠届出などの手続きや情報入手に便利な「母子健康手帳アプリ」を導入するとともに、市民のニーズに応じた情報をプッシュ型で提供できる「LINE公式アカウント」の導入を行います。また、学童保育室のICT環境の整備を行い、保護者サービスの向上と業務の効率化を進めるとともに、市役所業務において、生成AIやノーコードツールの活用を進めます。自治体情報化システムの標準化については、引き続き、ベンダーと連携した取り組みを進め、新年度中には、住民基本台帳や印鑑登録など7業務の移行を行い、他の業務については、令和8年度に移行いたします。
(2)蕨駅西口再開発事業の推進
第2に、「蕨駅西口再開発事業の推進」についてです。この事業は、蕨の未来への飛躍に向けた中核となる事業として、駅前広場の拡幅リニューアルや駅前の立地を活かした魅力的な商業施設、都市型高層住宅に加えて、公共公益施設として利便性の高い図書館や行政センターを整備するもので、人口減少社会にあっても、蕨市が「選ばれるまち」として、大きな魅力を発信する事業であります。
昨年1月からは、本格的な建築工事がスタートし、順調に工事が進んでおり、新年度は、15階程度まで建ち上がる予定でありますが、引き続き、事業を着実に推進するため、再開発事業に対する補助金を計上するとともに、再開発組合に対する支援を行い、令和9年7月の完成を目指して進めてまいります。
(3)市立病院の移転建替え
第3は、「市立病院の移転建替え」についてです。市民の命と健康を守る拠点である市立病院は、耐震化、老朽化への対応のため、昨年3月に移転建替え方針を決定し、その後、新病院の基本構想・基本計画の策定を進めてまいりました。先月、蕨市立病院整備検討審議会から答申をいただいたことを受けて、今月は、12日に市民説明会を開催するとともに、現在、パブリックコメントを実施しています。
基本構想・基本計画案では、新病院整備の基本方針として、急性期医療の継続や地域包括ケアへの対応、周産期医療、小児医療の提供、市民の健康の維持増進への対応、入院環境の改善など8つを掲げ、施設整備の基本的な考え方として、バリアフリー、ユニバーサルデザインへの対応や災害に強い施設、近隣環境と景観への配慮など9つを掲げています。また、施設の規模は、現状の130床をベースとしながら検討を行うことや診療体制、交通アクセスの向上などについて基本的な考え方が示されています。
今後、3月末までに基本構想・基本計画を策定し、新年度は、基本設計に着手するとともに、コンストラクション・マネジメントを含めた開院支援業務の委託を行います。また、市立病院建設基金に10億円を積み立て、30億円とする補正予算案を今議会に提出させていただきました。
市立病院の建替え・充実は、蕨市が安心して住み続けられる、選ばれるまちとして発展していく上で、大変重要な課題であり、今後も、市議会並びに市民の皆さんのご理解をいただきながら、着実に進めていきたいと考えています。
令和7年度蕨市予算概要
それでは、令和7年度蕨市一般会計予算の概要について申し上げます。
歳入においては、歳入の根幹をなす市税収入を前年度比7億5,000万円増の122億7,000万円、地方交付税は2億7,000万円増の26億円、国庫支出金は再開発事業補助金などの増により、約12億5,900万円増の約73億3,700万円と見込んだほか、繰入金は約7億9,900万円増の約23億4,000万円、市債は約7億600万円増の約15億3,100万円と見込みました。
一方、歳出においては、蕨駅西口再開発事業補助金や学校トイレの改修、市民会館改修事業などの建設関連予算、学童保育室の増設や保育体制の強化、ICT教育の推進など子育て・教育関連予算の増額のほか、新病院建設基本設計や下水道管路の耐震化に向けた計画の策定など、企業会計への繰出金の増額等により、予算総額は前年度比14.1%増の321億8,000万円となりました。
特別会計は、国民健康保険や錦町土地区画整理事業など5つの会計からなり、その総額は158億7,200万円、病院、水道、下水道の企業会計合計額は、64億7,392万3,000円で、以上の全会計を合わせた蕨市全体の予算規模は、545億2,592万3,000円となりました。
将来ビジョンⅡの7つの柱に沿った主な施策
次に、将来ビジョンⅡに掲げる、まちづくりの目指す姿を分野別に示した7つの柱の主な施策について申し上げます。
(1)安全で安心して暮らせるまち
1点目の「安全で安心して暮らせるまち」では、大規模災害での避難所の生活環境の向上のため、国の新たな交付金を活用し、ラップ式トイレやテント型集合トイレ、簡易ベッド、屋内用テントを充実・整備するほか、木造住宅耐震改修補助金制度を拡充し、新たに耐震シェルター等の設置に対し、10万円を上限に補助を行います。また、市民の生命・財産を守る拠点である消防本部庁舎について、仮眠室個室化改修工事などを行うとともに、高規格救急自動車と消防ポンプ自動車の更新整備を行います。
(2)豊かな個性を育み子どもたちの未来輝くまち
2点目の「豊かな個性を育み子どもたちの未来輝くまち」では、ブックスタートのフォローアップとして、3歳6か月児健診の際に、子どもの成長に応じた絵本をプレゼントするセカンドブック事業を実施します。
また、子どもたちの教育環境についても、民間事業者による屋内プールを活用した水泳授業を現在の小学校2校から4校に拡大するとともに、第一中学校、第二中学校のプール改修工事を行います。また、外国人児童生徒の増加に対応し、新たに東中学校内に日本語特別支援教室を整備し、部活動の地域移行・地域連携について、新たに水泳を加えた4種目での実証実験を行います。
更に、厳しい物価高騰が続いていることから、引き続き、物価高騰に伴う学校給食費の保護者負担軽減を継続するとともに、蕨市奨学金制度について貸与月額の引き上げを行います。
(3)みんなにあたたかく健康に生活できるまち
3点目の「みんなにあたたかく健康に生活できるまち」では、赤ちゃんの健やかな発育を支援するため、新たに1か月児健康診査の助成を実施するとともに、産後の母子の支援を強化するため、産婦健診の助成回数を増やし、合計2回とします。また、不妊治療における経済的負担を軽減するため、先進医療による不妊治療費に対し、1回あたり15万円を上限に助成を行います。
予防接種では、帯状疱疹ワクチンについて、新年度から65歳以上を対象に定期接種化を行うとともに、50歳以上64歳以下を対象とする市独自の補助も継続します。更に、市役所窓口で、聴覚障害のある方にタブレット端末で手話通訳を提供する「遠隔手話通訳サービス」を導入するほか、令和8年11月に埼玉県で初めて開催される「ねんりんピック」において、蕨市で将棋の文化交流大会を実施するため、新年度に設置する実行委員会に対し、視察やリハーサル経費等の補助を行います。
企業会計である市立病院については、コロナ禍を経て、様々な要因から全国的に病院経営が厳しくなっている状況がありますが、整形外科の休日における救急患者受入れを1月から開始したことに加え、今後、後発医薬品使用体制加算の取得、新年度には、地域包括ケア病床の導入を図るなど経営の安定化に向けた取り組みを進めるとともに、市立病院の安定経営の基盤づくりのため、繰出し基準の範囲内で、一般会計からの負担金の増額を行います。
(4)にぎわいと活力、市民文化と歴史がとけあう元気なまち
4点目の「にぎわいと活力、市民文化と歴史がとけあう元気なまち」では、市内の空き店舗の有効活用について、昨年締結した「空き店舗等の有効活用等の促進に関する協定」による連携も活かしながら、更に取り組みを進めていくとともに、蕨の自慢の逸品「蕨ブランド」第4期の認定を行い、フェアの開催やパンフレットの作成など、蕨の魅力を発信していきます。
また、令和9年度の新図書館への移行を見据え、図書館システムを更新し、LINE等との連携を図るほか、塚越グラウンドの全面改修工事のための基本設計を行うとともに、錦町スポーツ広場について、猛暑対策としてベンチの屋根や安全安心な利用のための防犯カメラを設置します。
(5)環境にやさしく快適で過ごしやすいまち
5点目の「環境にやさしく、快適で過ごしやすいまち」では、令和7年度も引き続き、老朽化した道路や大木化した樹木等への集中的な対応を実施します。また、錦町土地区画整理事業については、6年度の国の補正予算も活用し、新年度には、繰越明許費分8棟と合わせて32棟の家屋移転を計画しており、着実な推進を図ってまいります。
また、年末年始のごみの回収について、12月31日から1月3日はお休みとなっていますが、今年のように、暦の関係で収集が2回休みとなる地区が生じるケースがあることから、その場合は、年末の可燃ごみの回収を12月30日の午後に実施する実証実験を行うとともに、資源ごみの回収かごの軽量化についても、引き続き普及に向けた取り組みと検証を進めます。
(6)一人ひとりの心でつなぐ笑顔あふれるまち
6点目の「一人ひとりの心でつなぐ笑顔あふれるまち」では、戦後80年・蕨市平和都市宣言40周年を迎えるにあたり、記念式典を開催するほか、市内各施設で平和事業を実施します。また、国際交流事業について、友好都市であるドイツ・リンデン市に、蕨の青少年を派遣する国際青少年キャンプを実施するとともに、蕨市・アメリカ合衆国エルドラド郡姉妹都市盟約締結50周年の記念式典を実施します。
また、市民との協働によるまちづくりでは、SDGs提案制度について、新年度は、「Smart Wellness わらび ~健康で幸せなまちづくり~」をテーマとした2つの事業と自由テーマの3つの事業の計5つの事業を市民の皆さんとともに実施してまいります。
(7)市民と市がともに力を発揮して創る自立したまち
7点目の「市民と市がともに力を発揮して創る自立したまち」では、先の重点戦略で述べたように、全庁的に自治体DXを推進していくほか、SDGsに積極的に取り組む市内事業者を認定するSDGsパートナー制度の実施に取り組みます。また、市税の納税率は13年連続で向上していますが、引き続き収納対策を推進するとともに、国・県の補助金の積極的な活用や企業版ふるさと納税のマッチング支援の活用など、財源の確保にも努めてまいります。
以上が、令和7年度の主な施策や予算となります。
結びに
「滴(しずく)から大河へ」
昨年7月、新一万円札の肖像画に採用された、埼玉の偉人、渋沢栄一は日本初の銀行となる「第一国立銀行」を設立するにあたって、こうした趣旨の言葉を述べたと言われています。渋沢は、銀行の使命として、世の中の一つ一つの富を集めて、国や社会を豊かにしていく大きな流れを生み出すことにあると考えていましたが、私には、この言葉が、たとえ小さくても、一つ一つのまちでの取り組みが、やがて、大きな希望の大河となり、社会を動かす力となる、そんな励ましの言葉に聞こえてなりません。
蕨市は、日本一小さなコンパクトシティでありますが、本格的な人口減少社会にあっても、利便性の高い、住みよい都市として発展を続けるとともに、市民の皆さんのまちへの高い愛着と豊かな地域力に支えられた、大きな可能性と力を持つまちです。私は、我が国が困難な課題に直面する中にあって、蕨こそ、「安心して住み続けられる」「選ばれる」まちとして、更に成長、進化する、そんな全国のモデルとなるようなまちづくりを進めていけるものと確信をしており、その流れが、やがて大河となり、日本が直面する課題を乗り越える力となることを願っています。
新年度は、市民の皆さんの安心、にぎわい、そして、未来のために、蕨のまちづくりを更に加速化し、7万6千市民の幸せと蕨の未来への飛躍に向けて、私は、市長として、これからも、全力を尽くしていく決意であります。
市議会並びに市民の皆さんには、このような全国に誇れる蕨のまちづくりに、なおいっそうのお力添えをお寄せいただきますよう、心からお願いを申し上げ、令和7年度の施政方針表明といたします。ありがとうございました。
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