市長の施政方針表明(令和5年3月定例会)

ページ番号1009470  更新日 令和5年2月17日

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写真:施政方針を表明する市長
令和5年2月17日

はじめに

 本日、ここに、令和5年第1回蕨市議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位には、公私とも大変お忙しい中、ご参集を賜り、厚くお礼を申し上げます。今定例会は、令和5年度の当初予算をはじめとする重要な案件をご審議いただくことになりますが、この際、私がこれからの市政運営に臨む基本的な考え方や新年度予算の編成方針、更には予算の概要と主な事業について申し上げ、議員各位並びに市民の皆さんのご理解とご協力をお願いする次第であります。
 はじめに、今月6日に発生したトルコ・シリア大地震により、4万人を超える尊い命が失われるなど、甚大な被害が発生いたしました。改めまして、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。蕨市では、14日に、市内公共施設に募金箱を設置するとともに、昨日は、蕨駅西口において市職員による街頭募金を実施するなど、救援金募金に取り組んでいます。現在、世界中からの救援活動が行われていますが、1人でも多くの人命が救助され、一刻も早く被災者に必要な支援が届けられることを願っています。

新型コロナへの対応と「あったか市政」の真価

 さて、私の4期目の市政運営も間もなく4年を迎えますが、今期は、文字通り、新型コロナへの対応に総力をあげてきた期間でありました。3年前に始まった新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、人類にとって、スペイン風邪以来、100年ぶりに直面する全世界的なパンデミックであり、外出制限や学校の休校、飲食店などの営業自粛、イベントの中止など、生活や経済、教育、文化をはじめ、あらゆる面に深刻な影響を及ぼし、世界中の人々の日常を一変させました。
 我が国においても、2020年1月に最初の感染が確認されて以来、累次にわたる感染拡大の波と緊急事態宣言等による行動制限、医療提供体制のひっ迫など、初めて経験する重大な事態が相次いできました。
 こうした中、蕨市では、市長を先頭に、市職員が一丸となって、何としても、新型コロナから市民を守りぬく、その使命感と決意で、この事態に対応してきました。振り返ってみると、全庁的な体制で国より早いスピードで進めることができたワクチン接種や市立病院をはじめ医師会と共に対応した医療提供体制の整備、県と連携した自宅療養者支援、小規模企業者応援金や織りなすクーポンをはじめとする7回にわたる市独自の緊急対策など、感染対策でも、市民生活や事業者支援においても、更には、昨年来の物価高騰対策でも、大きな役割を発揮することができたと考えています。言わば、市民の暮らしを支える「あったか市政」の真価が、最大限に発揮された3年余であったと考えています。
 コロナについては、まだまだ予断を許しませんが、政府において、5月に、感染症法上の位置づけが、現在の2類相当から5類へ移行することが決定されるなど、大きな転換点を迎えており、今年は、ポストコロナ元年と言える年となります。同時に、物価高騰については、依然として厳しい状況が続くことが懸念され、引き続き、市民生活への更なる支援が必要とされており、今まさに「あったか市政」の継続、発展が強く求められている時であります。私は、市長として、引き続き、コロナと物価高騰から、市民生活と地域経済を守りぬくために、全力を尽くしていく決意であります。

「あったか市政」第2ステージの取り組み

 そして、今期の市政運営は、「あったか市政」第2ステージとして、市民の皆さんに50項目からなるマニフェストをお約束し、その実現に全力をあげてきた期間でもありました。
 私が、市長就任以来進めて来た「あったか市政」では、県南地域でいち早く実施した中学卒業までの医療費無料化や認可保育園の大幅な増設、35人程度学級の実施や学校へのエアコン設置、特別養護老人ホームや地域包括支援センターの増設、街なか防犯カメラや町会の皆さんと一体となった防犯対策による市内犯罪件数の大幅減少など、子育てや教育、介護、安全安心のまちづくりをはじめ、市政が大きく前進してきました。
 同時に、こうした市政運営の中で、遅れていた公共施設の耐震化の抜本的な強化や赤字経営が続いていた市立病院の経営改革による黒字化、多額の債務解消に向けた財政健全化など、市政改革を通じて、前市政からの深刻な課題を解決し、いよいよ、蕨のまちづくりが、未来への飛躍に向けた新たな段階に入る、それが「あったか市政」第2ステージです。
 今期のマニフェストも、学校体育館へのエアコン設置やICT教育の推進、入院に係るこども医療費無料化の高校卒業までの拡大、認可保育園や学童保育室の更なる増設、ぷらっとわらびのルート拡充、消防署塚越分署の建替えや防災行政無線のデジタル化、蕨駅のホームドア設置など、実施済と着手を合わせて92%まで進めることができました。
 この間、日本は、本格的な少子高齢化、人口減少社会に突入し、令和2年の国勢調査で、全国の自治体の8割で人口が減少し、首都圏に位置する埼玉県でも6割の自治体で人口が減少しています。こうした中、蕨市では、私の市長就任時には約7万人であった蕨市の人口は、現在、7万5千人を越え、小学生の数も、この9年間、増加が続くとともに、蕨市内の住宅地の地価上昇率は、昨年、県内で1位になり、市民意識調査においても、子育て世帯の8割近くが、蕨について「子育てしやすい」と回答するなど、まさに「選ばれるまちづくり」が進んでいます。
 財政の健全化についても、昨年度で11年連続上昇した市税の収納率向上などによる自主財源の確保や国・県の補助金の積極的な活用、土地開発公社の経営健全化などを進め、市長就任時と令和3年度末を比較すると、市の借金は、363億円から290億円へと73億円削減し、市の貯金にあたる基金は、37億円から84億円へと47億円増加し、合わせて、市の財政を120億円も改善することができました。

「くらしに安心 未来に希望を」

「一に一を加えて億とす、これ根気なり」

 この言葉は、帝都復興院総裁として関東大震災からの復興の指揮にあたった後藤新平の言葉です。今年は、関東大震災から100年を迎えますが、私は、後藤新平の言葉には、大震災、という困難に直面しながらも、一つ一つの取り組みを根気強く進めることで、それが、将来、必ずや「億」という飛躍につながる、そんな思いが込められているように、感じられます。実際、その後の東京は、昭和通りや日比谷通りと言った都内主要道路や公園、橋りょうの整備など、震災後の復興を基礎として、今日につながる大きな発展、飛躍を迎えることとなりました。
 この間、私は、市長として、コロナという経験したことがないパンデミックに対応しながら、「あったか市政」第2ステージの取り組みを進めて来ましたが、こうした土台の上に立って、いよいよ、秋には完成する新庁舎を拠点としながら、子育てや教育、防災や環境、自治体DXを進めながら、駅前再開発の着工、市立病院の建替えなど、「あったか市政」第2ステージの取り組みが本格化し、蕨は、まさに飛躍の時を迎えています。
 そこで、「くらしに安心 未来に希望を」をテーマに、令和5年度予算の編成を行いました。これは、コロナ禍に加え、今後も続く物価高騰から市民生活を守りぬく市政により「くらしに安心」を実現するとともに、蕨の飛躍に向けた3大プロジェクトなどを通じて「未来に希望を」持てる、そんな市政を実現していく予算であります。

くらしに安心~コロナと物価高騰から市民生活を守りぬく市政の発展へ

 最初に、「くらしに安心」、コロナと物価高騰から市民生活を守りぬく市政の発展に向けた、2つの取り組みについてです。

1 「新型コロナ・物価高騰緊急対策第8弾」

 1つ目は、「新型コロナ・物価高騰緊急対策第8弾」についてです。
 昨年来の急激な物価高騰が市民生活を直撃する中、蕨市では、緊急対策第7弾として、昨年9月、10月の水道基本料金2か月分無料化や11月のスマホ決済を活用した消費者・事業者支援に続き、12月からは「織りなすクーポン」事業に取り組んでいるところですが、物価高騰は、依然として厳しい状況が続いています。12月の消費者物価指数は、前年同月比4.0%上昇で、41年ぶりの高い水準となり、今年も、4月までに7000品目以上の食品の値上げが予定されており、電気やガス料金も、更に値上げの申請が行われている状況であり、市民の皆さんからは、悲痛な声が寄せられています。一方、賃金については、現在、春闘が行われていますが、賃上げの波が、中小企業や非正規労働者にまで広がるには、まだまだ時間がかかると言われています。
 そこで、今回、蕨市では、物価高騰から市民生活を守るため、総事業費約3億4800万円からなる、緊急対策第8弾を実施することとしました。
 第1は、水道基本料金4月分の無料化です。これは、市内の全ての家庭と事業所を対象に、水道基本料金4か月分を無料化するもので、一般家庭で3960円、事業所で4400円の負担軽減となります。
 第2は、保育園、幼稚園、小中学校の給食費4か月分の無償化です。これは、特に、物価高騰の影響を強く受けている子育て世帯を応援するため、保育園、幼稚園、小中学校に通う市内の全ての子ども達を対象に、給食費4か月を無償化するものです。
 第3は、地域活性化・消費者応援事業の第4弾です。これは、スマホ決済を活用し、支払額の20%をポイント還元することで、市民、消費者の家計を応援するとともに、市内店舗の売り上げアップにつなげていくものです。キャンペーンの実施は6月を予定していますが、5月には、市内全ての公民館で、スマホに不慣れな高齢者の皆さんを対象としたスマホ教室を開催します。
 第4は、ポストコロナ地域活動支援事業です。これは、防災防犯活動やごみ環境問題、地域での交流など、住み良いまちづくりを進める上で重要な役割を担っている町会に対し、ポストコロナにおける活動再開を支援するため、1つの町会に30万円を上限に補助するものです。
 第5は、抗原検査キットの配備です。これは、今後の感染の再拡大に備えて、抗原検査キットの備蓄を行うもので、市民の皆さんの安心につなげていきます。

2 新型コロナワクチン接種事業の推進

 2つ目は、新型コロナワクチン接種事業の推進についてです。蕨市では、昨年9月より、オミクロン株対応ワクチンの接種に取り組み、接種率は、高齢者で75%、全体では45%となっています。当初、ワクチン接種は3月末まで、とされていましたが、2月8日、厚生労働省から、新年度の接種について、「重症化予防」を主な目的として、全ての人を対象に、秋・冬に1回接種を行うとともに、高齢者など重症化リスクの高い人には、加えて接種を実施すること、小児や乳幼児への接種も継続する方針案が示されました。この方針は、最終的には、3月上旬までに決定される見込みですが、蕨市では、令和4年度予算のワクチン接種事業費において、約2億5000万円の執行残が見込まれることから、これを新年度に繰り越して、引き続き、速やかにワクチン接種を推進できるよう、地元医師会の皆さんとの連携しながら、必要な接種体制の構築を進めてまいります。

未来に希望~蕨の飛躍に向けた3大プロジェクトと選ばれるまちへ加速化する3つの重点事業の推進

1 蕨の飛躍に向けた3大プロジェクトの推進

 次に、「未来に希望」が持てる、蕨の飛躍に向けた3大プロジェクトの推進について、申し上げます。

(1)市立病院の建替えで、誰もが健康に暮らせるまち蕨へ

 3大プロジェクトの1つ目は、市立病院の建替えで、誰もが健康に暮らせるまち蕨への取り組みです。市立病院は、救急医療や市内で唯一出産できる医療機関であるなど、地域の中核病院としての役割を果たすとともに、新型コロナへの対応においても、発熱外来や入院患者の受け入れなど、重要な役割を担ってきました。
 同時に、施設の耐震化や老朽化対策が大きな課題となっており、この間、施設整備検討委員会において、今後の整備の方向性について検討を進めて来ましたが、先月、報告書がまとまりました。検討委員会では、市の「公共施設等総合管理計画」の方針に基づき、既存施設の耐震化を含む長寿命化を基本に検討してきましたが、耐震化工事による病床の減少や病院機能の低下などの影響、既に建設から52年経過し、多額の費用をかけても安全に使用できる期間が短く、中長期的な財政負担が大きいことから、既存施設を耐震化する手法は「適さない」ものであり、「建替えすべき」との結論に達しました。
 市では、この報告を受けて、今後、市立病院の建替えを進めていく方針を決定し、引き続き、建替えの手法について検討を進めるとともに、多額の資金が必要な事業となることから、今議会に、市立病院建設基金を設置する条例と、基金に10億円を積み立てる補正予算案を提出させていただきました。
 私は、少子高齢化、人口減少社会において、選ばれるまちづくりを進めていく上で、市立病院の存在は、蕨にとって大きな強みであり、新市立病院の建設は、蕨の未来への発展に向けて、重要な事業になると考えています。新年度中には、建替えの手法を決め、新病院の建設に向けて、大きな一歩を踏み出してまいります。
 また、新市立病院の建設と合わせて、蕨における健康づくりの取り組みを更に発展させるため、新年度には、「第3次健康アップ計画」を策定し、スマートウェルネスシティを目指してまいります。

(2)蕨の飛躍につながる蕨駅西口再開発事業の推進

 2つ目は、蕨駅西口再開発事業の推進です。この事業は、蕨の新たな顔となる駅前広場の整備や魅力的な商業施設、都市型住宅、そして、行政センターや図書館など公共公益施設を整備するものですが、まさに、蕨市が「選ばれるまち」として、未来への飛躍に向けた中核となる事業であります。
 昨年8月から、地区内の道路を封鎖し、建物の解体工事が始まっており、1月末には、地区内のすべての既存施設の引き渡しも完了し、いよいよ本格的な建設工事の着工に向けて動き出しています。新年度予算では、再開発事業への補助金として約3億2800万円を計上していますが、今後も、事業主体である再開発組合に対して支援を行いながら、令和8年度の竣工を目指して、しっかりと事業を推進してまいります。

(3)市民サービスと災害対応の拠点となる市役所の建替え

 3つ目は、「市民サービスと災害対応の拠点となる市役所の建替え」ですが、いよいよ、今年の秋には、建替え工事が完了し、新庁舎の開庁を迎えることとなります。新庁舎は「~歴史・文化を活かし『未来の蕨』を創造~人と環境にやさしく、市民に親しまれ、安全でコンパクトな庁舎」の理念に基づき、免震構造を採用して安全性が極めて高い構造となっている他、各階に多くの相談室を設け、一階には、玄関に蕨市にゆかりのある絵画などを展示できるスペースを設けるとともに、市民の皆さんがイベントなど多目的に使えるスペースやカフェを整備し、そこには、Wi-Fi環境や蕨ブランド品なども備える予定です。その他、休日などは、カフェスペースと一体で利用できる玄関庭や通り庭、また、従前より広くなる駐車場は、市民のイベントなどにも活用できます。そして、今後、工事の進捗と共に、建物の外観が姿を見せることとなりますが、中山道の歴史をイメージしたデザインとなっており、まさに、蕨の新しいシンボルとなる施設であります。
 更には、新庁舎の開庁に合わせて、マイナンバーカードで住民票の自動交付などを行えるマルチプリンターの設置や書かずに申請を行える「スマート窓口」の導入など、市民サービスの向上と自治体DXの推進を図ってまいります。

2 選ばれるまちづくりを加速化する3つの重点事業

次に、着実に前進してきた選ばれるまちづくりを更に加速化する3つの重点事業について申し上げます。

(1)妊娠期からの切れ目のない支援と教育の充実

 重点事業の1つ目は、妊娠期からの切れ目のない支援と教育の充実です。これまで大きく前進してきた子育て支援と教育を更に拡充し、子ども達の笑顔輝くまちづくりを進めます。
 まずは、妊娠・出産・子育てを切れ目なく支援する総合的な対策を進めるため、「子ども家庭総合支援拠点」と「子育て世代包括支援センター」の機能を一体化した「こども家庭センター」を新庁舎開庁時に設置し、新たに開始する「子育て世帯訪問支援事業」により、妊婦から子育て家庭、ヤングケアラーまで、支援が必要な方への「家事・育児支援」を行います。また、産後ケア事業を拡充し、子育てへの不安や心身の不調を感じる家庭を対象に、「短期入所型」と「通所型」の支援を開始します。更に、市独自に、新生児1人あたり5000円を給付する「子育てファミリー応援給付金」をスタートします。
 次に、教育の充実では、蕨市では、この間、国に先駆けての市独自の35人程度学級の実施や児童生徒1人1台のパソコン整備、英語4技能テストGTECの導入などに取り組み、蕨の子ども達は、学力でも体力でも素晴らしい成果をあげてきましたが、新年度からは、全児童生徒のパソコンにデジタルドリルを導入し、基礎学力の更なる向上と一人一人の理解度に応じた学びを進めます。また、学校体育館へのエアコン整備について、東小と南小での設置工事、西小、中央東小、塚越小での設計委託を行うなど、子ども達の教育環境の一層の向上を図ります。

(2)防災都市づくりの推進

 重点事業の2つ目は、防災都市づくりの推進です。秋に開庁する新庁舎は、免震構造により、震度6強から7の地震にも耐えられる建物である上に、災害発生時には、速やかに災害対策活動を可能とする災害対策本部機能、災害用資機材の備蓄や非常用発電機設備、非常用排水槽などの業務継続機能を備えています。更に、新庁舎には、災害発生時の被害情報や避難所情報を収集・一元管理できる防災情報システムを導入し、新たに整備するデジタルMCA無線と合わせて、情報・通信体制の強化を図ります。
 また、災害対策の基本となる地域防災計画については、近年の大規模災害の教訓や課題を踏まえて、大幅な改定を行う予定です。
 加えて、消防本部では、現在の「蕨指令1」に代えて、新たに災害救助用資機材搬送車を導入するとともに、蕨市消防団第3分団の消防ポンプ自動車の更新を行うなど、消防・防災力の向上を図ってまいります。

(3)日本一のエコシティ蕨を目指す取り組み

 重点事業の3つ目は、脱炭素社会に向けた取り組みなど「日本一のエコシティ」に向けた施策の推進です。地球温暖化による気候変動は、既に、世界的な異常気象による災害の多発化など深刻な影響を及ぼしており、脱炭素社会の実現は、日本と世界の未来、存続にかかわる重大問題となっています。
 現在、第3次環境基本計画の策定を進めていますが、新年度からは、この計画に基づき、「日本一のエコシティ」に向けて、意欲的な取り組みを進めていきます。
 第3次環境基本計画の素案では、重点プロジェクトとして、再エネ・省エネの加速化、ソーラー蓄電池ステーションの導入、カーボンオフセットの取り組み、エコグリーンの実行、そして、ゼロカーボンシティ宣言という5つの計画を掲げていますが、新年度においては、早速、再エネ・省エネ加速化プロジェクトに着手します。地球温暖化対策設備等設置費補助金を抜本的に拡充し、個人に対しては、太陽光発電システムへの補助金を15万円に拡大するとともに、新たに、リチウムイオン蓄電池やEV・電気自動車、EVの蓄電を家庭で活用するシステムであるV2Hなどを補助対象に加えるとともに、太陽光発電や蓄電池については、市内事業者にも補助対象を拡大します。更に、エコグリーン実行プロジェクトについて、シェアサイクル事業を民間事業者と連携して、実施していきます。

令和5年度蕨市予算概要

 それでは、令和5年度蕨市一般会計予算の概要について申し上げます。
 歳入においては、歳入の根幹をなす市税収入を前年度比3億円増の117億5,000万円、地方交付税は2億7,000万円増の18億7,000万円、国庫支出金は約2億円減の約54億5,100万円と見込んだほか、繰入金は約7億6,500万円増の約21億9,200万円、市債は約15億400万円減の約11億5,500万円と見込みました。
 一方、歳出においては、新型コロナ・物価高騰緊急対策や蕨駅西口再開発事業、道路の集中的な補修事業などにより、経費が増となる一方、新庁舎建設事業や新型コロナワクチン接種事業などの経費が大幅に減となり、予算総額は前年度比0.6%減の277億円となりました。
 特別会計は、国民健康保険や錦町土地区画整理事業など5つの会計からなり、その総額は152億8,200万円、病院、水道、下水道の企業会計合計額は、63億2,855万8,000円で、以上の全会計を合わせた蕨市全体の予算規模は、493億1,055万8,000円となりました。

将来ビジョン6つの柱と推進プランⅡに沿った主な施策

 次に、将来ビジョンに掲げるまちづくりの6つの基本目標及び将来ビジョン推進プランⅡに沿った行財政運営の主な施策について申し上げます。

(1)安全で安心して暮らせるまち

 1点目の「安全で安心して暮らせるまち」では、「橋りょう長寿命化修繕計画」に基づき、塚越陸橋は、4か年事業の3年目として、跨線部の修繕を行うとともに、蕨跨線人道橋は4か年事業の2年目として、修繕及び耐震化を実施してまいります。なお、この2つの橋りょう改修事業の総事業費は、約14億円となります。
 また、道路交通法の一部改正により、4月から努力義務となる自転車用ヘルメットの着用促進のため、自転車安全利用条例を改正するとともに、全ての世代を対象に、購入費の2分の1を補助する自転車用ヘルメット購入費補助金を新たに設けます。

(2)豊かな個性を育み子どもたちの未来輝くまち

 2点目の「豊かな個性を育み子どもたちの未来輝くまち」では、重点事業の取り組みに加えて、教育環境の整備として、学校トイレの改修を加速化し、小学校3校と中学校1校の改修を行います。また、西小において、民間施設を活用した水泳授業を実施し、その効果を検証するとともに、学校の運営や課題に対して、広く保護者や地域の皆さんが参画し、より良い学校づくりを目指す「コミュニティ・スクール」を、新たに、西小、北小、二中を1つの校区として設置します。

(3)みんなにあたたかく健康に生活できるまち

 3点目の「みんなにあたたかく健康に生活できるまち」では、自力でごみ出しを行うことが困難で、他の福祉サービスによる対応が難しい高齢者世帯や障害者世帯を対象に、ごみの戸別収集を開始します。
 また、現在、保健センターで実施している1歳児相談に代えて、新たに、指定医療機関による個別健診として、10か月児健康診査を実施し、身体測定や診察、育児相談などを通じて、子どもたちの健やかな成長につなげていきます。
 更に、地域共生社会の実現に向け、市や関係機関、住民が一体となって、地域での生活課題に対応する包括的な支援体制の更なる整備を図るため、地域福祉計画の策定を2か年で進めることとし、新年度には、基礎調査や関係機関による協議体の設置を進めてまいります。

(4)にぎわいと活力、市民文化と歴史がとけあう元気なまち

 4点目の「にぎわいと活力、市民文化と歴史がとけあう元気なまち」では、魅力ある店舗づくりを支援するため、専門家による企業診断や商工会議所による伴走型の支援を行いながら、店舗等のリニューアル費用に対し、事業費の3分の2、30万円を上限に助成する「魅力ある店舗づくり支援事業助成金」を新たに創設します。
 また、新年度は、蕨駅開業130周年記念事業への補助を行うとともに、「さよなら私のクラマー」や女子プロサッカー「WEリーグ」と連携したまちづくりを更に盛り上げ、聖地巡礼マップの作製やコラボ商品の開発などによりアニメツーリズムを推進するほか、女子サッカーを応援する取り組みとして、WEリーグの応援ツアーや女子児童等を対象としたサッカー教室などを開催します。

(5)快適で過ごしやすく環境にやさしいまち

 5点目の「快適で過ごしやすく環境にやさしいまち」では、新年度は、道路補修事業などの予算を大幅に増額し、老朽化した路線や樹木等への集中的な対応を実施するとともに、公園施設長寿命化計画に基づき、大荒田交通公園について、管理棟の建替えや舗装、信号機、交通標識、外柵などの改修を実施します。
 錦町土地区画整理事業については、令和4年度の国の第2次補正予算も活用し、新年度には、繰越明許費分5棟と合わせて26棟の家屋移転を計画しており、着実な推進を図ってまいります。
 更には、新たに策定する「マンション管理適正化計画」に基づき、新年度には、マンション管理組合を対象に、セミナーの開催を増やすとともに、新たに、管理情報誌の発行やマンション管理アドバイザーの派遣を行います。
 その他、生活環境の改善に向け、カラス対策として、各町会の「クリーンステーション」に、折りたたみ式もやすごみ回収BOXを試験的に導入いたします。

(6)一人ひとりの心でつなぐ笑顔あふれるまち

 6点目の「一人ひとりの心でつなぐ笑顔あふれるまち」では、蕨市多文化共生指針に基づき、新庁舎開庁にあわせて、市民活動推進室内に外国人住民に向けた一元的相談窓口を設置します。
 市民との協働によるまちづくりでは、協働提案事業として、SDGsを活かした地域活性化事業などをテーマに、乳幼児を持つ母親のための「私ケア」事業や食による地域活性化プロジェクト『わくわくフェス』など、5つの事業を実施してまいります。

持続可能な都市・蕨に向けた行財政運営

 続いて、持続可能な都市蕨に向けた、行財政運営の取り組みについて申し上げます。
 まず、市の最上位計画である新たな「将来ビジョン」策定に向けた取り組みです。今年度は、市民意識調査の実施や市民ワークショップ、若者ミーティングの開催、現ビジョンのフォローアップなど、基礎調査を実施してまいりましたが、新年度には、「蕨市将来ビジョン審議会」を設置し、将来構想について諮問を行うとともに、各分野の基本計画の策定を進めるなど、令和6年度からの10年計画となる新たな「将来ビジョン」を策定していきます。
 収納対策でも、この間の成果の上に、新たに市職員及び徴収専門員からなる「特別対策チーム」を設置するなど、埼玉県との連携を図りながら、収納率向上に向けた取り組みを加速化させてまいります。

結びに

「この世を動かす力は、希望である」

 これは、ドイツの神学者であり、宗教改革でも知られるマルティン・ルターの言葉です。私は、2013年、初めて、蕨の友好都市であるドイツ・リンデン市を訪問した際に、独日協会リンデン蕨のギュンター・ヴァイス会長とともに、アイゼナハを訪問させていただきましたが、そこで、ルターが聖書のドイツ語訳に勤(いそ)しんだと言われる「ルターの部屋」を見る機会がありました。ルターの生まれた15世紀のヨーロッパは、ペストなどの疫病や戦乱など厳しい時代にありましたが、そんな時代に生きたルターは、希望こそが、人々の勇気と意志を揺り起こし、世の中を動かすことを信じていたのではないかと思います。
 今、日本は、人口減少社会に加えて、長引くコロナ禍を経験してきましたが、そんな時代だからこそ、未来への希望が大切だと私は確信しています。
 そして、先ほど申し上げた通り、「あったか市政」第2ステージが本格化する中で、市の新たなシンボルとなる新庁舎を拠点にしつつ、駅前再開発や新たな市立病院の建設など、まさに、未来に希望が持てる、そんな蕨のまちづくり、が始まっています。そして、何よりも、選ばれるまちづくりの最大の原動力となるのは、市民の皆さんのまちへの思いです。昨年の市民意識調査でも、市民の皆さんのまちへの愛着は、70%を超える高い結果となりました。そんな市民の皆さんと共に、暮らしの安心を実現しつつ、未来への希望を共有しながら、人口減少社会を乗り越える、蕨のまちづくりを進めていきたいと考えています
 私は、これからも、7万5千市民の幸せと蕨の未来への飛躍に向けて、市長として、全力を尽くしていく決意であります。市議会並びに市民の皆さんには、このような全国に誇れる蕨のまちづくりに、なおいっそうのお力添えをお寄せいただきますよう、心からお願いを申し上げ、令和5年度の施政方針表明といたします。ありがとうございました。

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